タイムマシン time machine 2004 7 15
タイムマシンは、未来だけでなく、過去にも行けると聞きました。
あれは、まだ、私が、大学生のころの話です。
私は、友人たちと、あるテーマを研究していました。
そのテーマとは、今風に言えば、規制緩和です。
当時は、「規制によって守られている業界に、市場原理を導入する」というテーマだったと思います。
研究対象の業種として、銀行業界、通信業界、電力業界、テレビ業界などでした。
私たちは、まず、過剰な銀行の統廃合というテーマから始めました。
別の学友たちから、こんな質問が多かったからです。
「銀行に貯金すると、もらえる『景品』は、どこの銀行も、1枚のカレンダーで、
しかも、1枚の紙に、12か月分が表示されている。
これは、法律によって、規制されているのか。」
このカレンダーの件は、法律ではなく、
業界の自主規制というか、横並び体質そのものだったのです。
当時の銀行業界では、負け組を作らないというか、
強い銀行も、弱い銀行に合わせるという「風習」がありました。
これは、行政的に言えば、護送船団方式と言うのでしょうか。
また、当時は、都市銀行、信託銀行、相互銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合など、
銀行のようなものが、星の数と言えるほど、たくさんありました。
こうした銀行業界に、市場原理を導入すれば、
よく言えば、このような「住み分け」は、あり得なかったのです。
悪く言えば、当時の銀行業界は、小学校の運動会で、50メートル競走で、
仲良く、手をつないでゴールをするという感じだったでしょうか。
ただ、当時の議論としては、日本は、人口増加社会であるので、
こうした「小学校の運動会方式」でも、問題はないという結論になりました。
低成長時代や人口減少時代になったら、市場原理を導入すべきであるという結論です。
一般的に、人口増加社会ならば、大部分が勝ち組で、負け組は少ないという法則があります。
人口減少社会になると、勝ち組と負け組に分かれていきます。
当時でも、ある程度、人口構造の変化については、推定できましたので、
研究グループの多くは、銀行に就職することは、やめました。
あれから、何年経ったでしょうか。
もう、数えるのも面倒な年数です。
しかし、私には、あの時、友人と議論したことが、
教室で議論し、学生会館で議論し、飲み屋で議論したことが、
つい昨日のように、鮮明に甦ります。
人間の頭の中は、タイムマシンのようになっているのでしょうか。
少なくとも、人間の頭の中では、タイムマシンのように過去にも行ける。